同棲を始める際、「世帯主はどっちにしよう」という問題があります。
同棲では、2人ともそれぞれ世帯主として登録できます。どちらか1人に決めなければならない、という決まりはありません。
同じ住所に住んでいても、生計が別であれば世帯を2つに分けて届け出られるためです。
ただし、選び方によって国民健康保険料の請求先や勤務先の手当の扱いが変わります。損をしないか不安に感じる方は多く、Yahoo!知恵袋にも世帯主の決め方に迷っているという投稿が見られます。

判断の分かれ目になるのは、加入している保険と勤務先の手当の2つです。
この2つを確認すれば、2人に合うほうを選べます。
そこで本記事では、同棲の世帯主の決め方と、選んだ結果で変わること、判断の基準を順番に解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
同棲の世帯主とは

同棲の世帯主は、役所へ出す届け出の内容によって決まります。
収入の多さで自動的に決まる仕組みではないため、まずは何をもとに決まるのかを押さえておきましょう。
ここでは、次の2点を解説します。
- 世帯主は届け出によって決まる
- 収入が多いほうを選ぶ決まりはない
順番に確認していきましょう。
世帯主は届け出によって決まる
同棲の世帯主は、転入届や転居届などの届け出に記入することで決まります。
書類に世帯主として記載した人が、そのまま住民票へ登録される流れです。
ここで押さえておきたいのが、生計が別であれば同じ部屋に住んでいても世帯を分けて登録できる点です。
同棲を始めるからといって、どちらか1人を世帯主に決めなければならないわけではありません。
登録した内容は住民票に記載されるため、証明書を取ったときに世帯主が誰かを確認できます。
あとから世帯主が誰か分からなくなったときは、住民票の写しを取って確かめてみてください。
収入が多いほうを選ぶ決まりはない
「収入が多い人を世帯主にする」という決まりは、法律で定められているわけではありません。
実務上は、生計を主に維持している人を届け出ることが多いとされています。
もうひとつ混同しやすいのが、賃貸契約の名義人との関係です。世帯主と賃貸契約の名義人は別のもので、どちらか一方に揃える決まりもありません。
賃貸契約をどちらか一方の名義で結んでいても、もう一方を世帯主として届け出られます。
契約の名義と役所への届け出は切り離して、それぞれ話し合って決めましょう。

同棲では2人とも世帯主になれる

同棲では、2人がそれぞれ世帯主として登録できます。
同じ住所であっても、世帯を2つに分けて届け出られるためです。
そこで、世帯を分ける場合とまとめる場合で変わる4項目を表にまとめました。
| 項目 | 世帯を分ける | 世帯をまとめる |
|---|---|---|
| 世帯主 | 2人ともなる | どちらか1人 |
| 住民票の続柄 | ー | 同居人 |
| 国民健康保険料 | それぞれに請求 | 世帯主にまとめて請求 |
| 会社の手当 | 各社の規定次第 | 各社の規定次第 |
ここからは、世帯を分けた場合とまとめた場合をそれぞれ確認していきます。
世帯を分ければそれぞれが世帯主になる
世帯を分けて届け出れば、2人ともそれぞれの世帯の世帯主として登録されます。
同じ住所に住んでいても、生計が別であれば世帯を2つに分けて届け出られるためです。
この形で登録すると、住民票は2人が別々に取得でき、相手の情報は記載されません。
住民票を提出する場面でも、相手の名前が出ることはありません。
世帯をまとめると世帯主は1人になる
1つの世帯として届け出た場合は、世帯主が1人だけです。
同棲では「同居人」と記載されるケースが一般的です。どちらを世帯主にするかは、届け出るときに2人で決めて記入します。
役所が指定するわけではないため、窓口へ行く前に2人で結論を出しておきましょう。
同棲で世帯主を2人にするメリット

世帯を分けて2人とも世帯主にすると、プライバシーの面と手続きの面で扱いやすくなります。
同棲で世帯主を2人にするメリットは、次の3つです。
- 住民票から同居の事実が伝わらない
- 解消するときの手続きが少なくて済む
- 勤務先の制度を個別に判断できる
それぞれ見ていきましょう。
住民票から同居の事実が伝わらない
世帯を分けておくと、それぞれの住民票に相手の情報は記載されません。
勤務先へ住民票を提出する場面でも、同棲していることは伝わりません。
職場に交際状況を知られたくない方にとっては、この点が世帯を分ける理由です。
同棲を解消したあとも、住民票に同居人の記録が残らない形になります。
解消するときの手続きが少なくて済む
世帯を分けておけば、同棲を解消するときの手続きは、退去する側が転出届または転居届を出すだけで完結します。
世帯を分けていればこの届け出は不要になり、役所へ行く回数も減らせます。
勤務先の制度を個別に判断できる
世帯を分けると、2人とも「世帯主」として勤務先の制度に当てはめられます。
住宅手当のなかには「世帯主であること」を条件にしている会社もあり、その場合は2人とも条件を満たせます。
どちらか1人にまとめると、世帯主にならなかったほうは条件から外れるため、手当の金額に差が出る部分です。
申請の前に、勤務先の規定を確認しておきましょう。
同棲で世帯主を2人にするデメリット

世帯を分ける形にはデメリットもあり、保険料や手当で不利になるケースがあります。
同棲で世帯主を2人にするデメリットは、次の3つです。
- 国民健康保険料が上がる場合がある
- 住宅手当の二重取りとみなされるおそれがある
- 結婚したときに世帯をまとめる手続きが必要になる
ひとつずつ確認していきます。
国民健康保険料が上がる場合がある
世帯を分けると、国民健康保険料が上がる場合があります。
国民健康保険には世帯の所得で決まる軽減の仕組みがあり、世帯を分けると判定が変わることがあるためです。
金額を先に知っておきたい場合は、届け出の前に市区町村の窓口で試算してもらうと、判断の材料がそろいます。
住宅手当の二重取りとみなされるおそれがある
同じ住所で2人が住宅手当を申請すると、二重取りとして返還を求められるときがあります。
1つの住まいに対して2件分の手当が支払われる形になり、勤務先の想定から外れるためです。
あとから返還を求められると、受け取った手当をまとめて戻すことになります。
そもそも同棲を手当の対象外にしている会社もあります。
2人とも勤務先の規定を読んだうえで、申請するかどうかを決めましょう。
結婚したときに世帯をまとめる手続きが必要になる
世帯を分けたまま結婚した場合、婚姻届を出しても2つの世帯が自動的に1つになるわけではありません。
婚姻届と世帯の届け出は別の手続きとして扱われるためです。
結婚のタイミングで役所へ行く用事がひとつ増えるため、将来の予定も含めて考えておきましょう。
同棲の世帯主を決める3つの判断基準

同棲の世帯主は、加入している保険と勤務先の手当、そして解消時の手続きの3点から判断できます。
同棲の世帯主を決める判断基準は、次の3つです。
- 加入している健康保険の種類で決める
- 勤務先の手当の条件で決める
- 解消したときの手続きのしやすさで決める
上から順番に確認していきましょう。
加入している健康保険の種類で決める
最初に確認したいのが、2人が加入している健康保険の種類です。2人とも勤務先の社会保険に加入しているなら、国民健康保険料の影響は受けません。
この場合は、保険料を理由に世帯主を決める必要はなくなります。
一方、どちらかが国民健康保険なら、世帯をまとめると世帯主に請求がまとまります。
請求先が変わる分、どちらが支払いを担当するかも合わせて決めておきましょう。
その前に、自分たちがどちらに加入しているかを保険証で確かめてから、判断してみてください。
勤務先の手当の条件で決める
次に見ておきたいのが、勤務先の手当の条件です。
住宅手当や家族手当の条件に、世帯主であることが含まれていないかを確認します。
条件に入っていれば、世帯主をどちらにするかが手当の受け取りに直結するためです。
条件は会社ごとに違うため、2人の勤務先を突き合わせて比べてみてください。
2人の会社で条件が食い違うケースもあります。
その場合は、手当が出るほうを世帯主にする選び方もあります。
解消したときの手続きのしやすさで決める
保険料と手当で差が出なかった場合は、解消したときの手続きのしやすさで選んでみてください。
世帯を分けていれば、片方が転出または転居するだけで手続きが完結します。
住民票の上でもともと別の世帯になっているため、残るほうの届け出は発生しません。
将来どうなるか分からない段階では、手続きの手間で選ぶのもひとつの考え方です。
同棲の世帯主を決めたあとの住民票の手続き

世帯主を決めたら、引っ越しに合わせて住民票の届け出を出しましょう。
出す書類は引っ越し先によって変わり、期限も決められています。押さえておきたいのは、次の2点です。
- 転入届と転居届は引っ越し先によって変わる
- 手続きの期限は住所を定めてから14日以内
順に見ていきましょう。
転入届と転居届は引っ越し先によって変わる
提出する届け出は、引っ越し前の住所と引っ越し先が同じ市区町村かどうかで変わります。
3種類の届け出を表にまとめました。
| 届け出 | 提出する場面 | 提出先 |
|---|---|---|
| 転入届 | 別の市区町村から引っ越す場合 | 引っ越し先の市区町村 |
| 転居届 | 同じ市区町村内で住所を変える場合 | 住んでいる市区町村 |
| 転出届 | 別の市区町村へ引っ越す場合 | 引っ越し前の市区町村 |
※出典:住民基本台帳法第22条〜第24条
2人が別々の住所から引っ越してくる同棲では、それぞれ出す書類が違うケースもあります。
お互いの現住所を確認したうえで、どちらが何を提出するのかを整理しておきましょう。
手続きの期限は住所を定めてから14日以内
転入届は、新しい住所に住み始めてから14日以内に提出します。
引っ越しの荷ほどきに追われていると過ぎてしまう期間なので、入居日が決まった時点で予定に入れておくと確実です。
持ち物は自治体により異なりますが、基本となるのは次の書類です。
- 本人確認書類
- 印鑑
- 転出証明書
世帯を分けるか、まとめるかは、この届け出のときに記入します。

同棲で世帯主を2人するときの注意点

世帯を2つに分ける届け出には、前提となる条件と、あとから扱いが変わる項目があります。
同棲で世帯主を2人にするときの注意点は、次の3つです。
- 生計が別であることが前提になる
- 「未届の夫(妻)」で届け出ると扱いが変わる
- 保険料や手当の扱いは自治体・会社ごとに異なる
順番に確認していきます。
生計が別であることが前提になる
世帯を分けられるのは、家計が別であると説明できる場合です。
家賃と光熱費だけを折半しているようなケースでは、判断に迷うこともあるでしょう。
その場合は、届け出の前に市区町村の窓口で相談してみてください。
「未届の夫(妻)」で届け出ると扱いが変わる
住民票の続柄には「同居人」のほかに、「未届の夫」「未届の妻」という記載もあります。
「未届の夫(妻)」は、婚姻届を出さずに事実婚として届け出る場合の記載です。
事実婚として届け出ると、健康保険の被扶養者の判断などで扱いが変わることがあります。
結婚の予定が決まっていない段階では、「同居人」を選ぶケースが多くなっています。
どちらを選ぶかで住民票の記載も変わるため、窓口で記入する前に2人で話し合っておきましょう。
保険料や手当の扱いは自治体・会社ごとに異なる
国民健康保険料の計算方法は、市区町村ごとに定められています。
同じ所得でも住んでいる自治体によって金額が変わるため、他の地域の事例はそのまま参考になりません。
住宅手当の条件も会社ごとに違うので、一般的な情報をそのまま当てはめないようにしましょう。
確認先は、市区町村の窓口と勤務先の総務の2か所です。
届け出を出す前に両方へ確認しておけば、あとから保険料や手当で想定外の結果になる事態を避けられます。
同棲の世帯主は加入保険と手当の条件で決めよう

同棲では、2人がそれぞれ世帯主になることも、どちらかにまとめることもできます。
どちらを選んでも届け出は受理されるため、優劣ではなく、2人の状況に合うかどうかで決める部分です。
選び方によって変わるのは、国民健康保険料の請求先と会社の手当、そして住民票の続柄の3点になります。
そのため、加入している保険と勤務先の手当の条件さえ確認すれば、2人で判断できます。
保険証と就業規則を並べて、世帯主が条件になっている項目があるかを見てみてください。それでも決め手が見つからず迷う場合は、世帯を分けておくと手続きがシンプルになります。
解消するときも結婚するときも、届け出の負担が軽い形を選んでおけば、そのつど悩まずに済むでしょう。

同棲の世帯主でよくある質問と回答
- 世帯主は後から変更できますか?
-
世帯変更届を提出すれば、入居後でも世帯主を変更できます。
手続きは、変更が生じた日から14日以内に、住んでいる市区町村の窓口でおこないます。
- 住民票を移さずに同棲してもよいですか?
-
住民基本台帳法では、住所を移したら届け出ることが定められています。
役所からの通知が届かないといった支障も出るため、引っ越しに合わせて届け出ておきましょう。
- 世帯主になると税金は変わりますか?
-
世帯主かどうかで、所得税や住民税の計算方法が変わるわけではありません。
個別の税額への影響が気になる場合は、税理士や市区町村の窓口に確認してみてください。
- 別れたときの手続きはどうなりますか?
-
世帯を分けていれば、退去する側が転出届または転居届を出すだけで済みます。
世帯をまとめていた場合は、残るほうにも世帯変更届の提出が必要になることがあります。
- 結婚したら世帯はどうなりますか?
-
婚姻届では世帯はまとまらないため、市区町村の窓口で世帯をまとめる届け出を出します。
- 同棲相手を扶養に入れられますか?
-
婚姻関係のないパートナーは、税制上の配偶者控除の対象にはならないとされています。
ただし判断は加入している健康保険組合によって異なるため、勤務先を通じて確認してみてください。

